大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和36年(オ)1235号 判決 1962年10月23日

上告人(控訴人)

村田好

被告人(被控訴人)

栃木県教委

栃木県

須永芳雄

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人広瀬通、同徳岡一男の上告理由第一点について。

論旨は、原判決が上告人の昭和二六年六月二〇日以後の欠勤をもつて勤務実績不良の判断資料としたことが経験則に違背すると、主張する。

しかし、原判決の確定した事実によれば、上告人は昭和二六年六月下旬頃被上告人教育委員会の担当課長より事情聴取のうえ一応休職願を提出するようにいわれ、ついで当時勤務していた久野村小学校の校長を通じ退職願提出方の勧告を受けたとはいえ、もとよりこれに応じなかつたものであり、その間出勤を妨害するような事情は一切なかつた、というのである。かかる事実関係の下においては、休職の勧告を受けた以後の欠勤をもつて勤務実績不良の資料となし得ないという経験則はない。

されば、原判決には所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう原審の専権に属する証拠の取捨選択、事実の認定を非難するに過ぎないものであつて、採用し得ない。

同第二点について。

論旨は、原審が被上告人須永芳雄の上告人に対する所論の言動をもつて上告人の名誉信用等を傷けるものではないと判断したことが社会通念および経験則に違背する、というのである。

しかし、原審認定の事実関係の下においては、原判決が被上告人須永芳雄の上告人に対する所論の言動をもつて校長の指導監督方法として必らずしも適切妥当なものでなかつたとみる余地はあるにしても、上告人の授業を妨害し、教諭としての授業権ないし地位を侵害し、同人の名誉信用を傷ける程度のものとは認められないとした判断は、正当であつて、是認することができる。

されば、原判決には所論の違法はなく、論旨は採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例